HSC
HSCとは
Highly Sensitive Child
(ハイリー・センシティブ・チャイルド)
HSCとは
HSCとは、Highly Sensitive Child(ハイリー・センシティブ・チャイルド)の略で、「生まれつきとても敏感で繊細な感覚や感受性を持った子ども」の事をいいます。アメリカの心理学者である、エレイン・N・アーロン博士が発表した概念で、HSP(Highly Sensitive Person)は、その大人版だと言えます。
HSCは生まれつき持っている気質なので病気や障害ではありません。また人種や性別に関係なく5人に1人はHSCともいわれていて実は多くの人が持っている性質です。また、生まれつきのものなので「親の育て方が原因でHSCになる」というわけでもありませんので保護者の方は「自分の育て方のせいでHSCになってしまったのかもしれない」と自分を責めないようにしてください。
HSCには苦手な部分もありますが、その特性をしっかり理解して支援する事で、お子さんの本来持っている才能をしっかりと伸ばしてあげることが可能です。まずは気質を知って認めてあげることから始めてみてください。
きっと保護者の方が一番の理解者になってあげることで子どもたちは安心して自分の気質を伸ばしてくれることと想います。
HSCの子が持つ4つの特性
HSP同様にHSCにも4つの特性があると言われています。
HSCの場合は大人とは違い、言葉での表現が難しかったり、大人ほど自分の感情をコントロールできない為に、保護者の方が「育てにくい」と感じる症状が大人とは異なる形で出ることが多いです。
4つの特性として以下の4つが挙げられています。
D:物事を深く考える(Depth of processing)
HSCは物事や情報を深く受け取り考えるのも特徴です。じっくり考えるので、行動を起こすのに時間がかかる事もあり、周りからは臆病や引っ込み思案のように見える事もあります。
時には大人びた事を言ったり、物事の本質を突くような鋭い質問などする事もありますが、それも特徴の一つです。
O:刺激を強く受けやすい(easily Overstimulated)
視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚の五感がとても敏感です。
明るすぎる場所や大きな音のする場所を嫌がる、些細な匂いの変化に気づく、服のタグやチクチクした肌触りを嫌がるなども多くみられます。暑さや寒さにも弱かったり、注射を怖がる痛みに弱いなどもあります。自分の周りで起こっているすべての事に気がつき、過剰に刺激も受けやすく、疲れやすいのも特徴です。精神的、肉体的にも負担がかかるため、遊びに行ってもすぐにぐったりしてしまう事があります。
E:感情的な反応が強い(Emotional responsiveness)
すぐ驚いたり、怖がったり、よく泣いたり、かんしゃくを起こしがちだったりと、物事に対してだけでなく、感情にも敏感です。ポジティブな感情やネガティブな感情、両方に強く反応します。自分の感情にも敏感ですが、人の心を読む事に長けているので、友達が叱られたり、悲しんでいると自分の事のように受け取るという、人よりも強い共感力も持っています。
S:微妙な刺激に対する共感と敏感さを持っている(empathy and sensitive to Subtle stimuli)
人や物の些細な変化などに気づきやすく、察知してしまう事があります。たとえば、かすかな臭いや小さな音、ほんのわずかな味の違いなど、他の人が気づかないちょっとした事が気になってしまいます。
対人関係でも相手の声のトーンやわずかな視線の動きちょっとした仕草を見落としません。
HSCのお子さんが感じている
よくある生きづらさ
HSCは人いちばい感受性が豊かな為に、生活をする中で感じる様々な刺激がかなり大きなストレスの原因となり、刺激過多になることで自分でも感情や不快感をコントロールすることが難しく、泣くことや癇癪を起こす、イライラするなどの表現をすることがみられます。
例えば新生児期ではなかなか寝付かない、よく泣く、癇癪を起こす、音に敏感ですぐに起きてしまうなどの姿もあります。乳幼児期では、洋服へのこだわりや偏食、大きな音を嫌がる、集団に入るのを嫌がるなど様々な症状で見られます。ただ、成長過程の中での発達の姿としてもそうした姿は見られますので、一概にイコールとはなりませんが、丁寧にお子さんの様子を観察する必要があります。
育てにくさを感じたら、「もしかしてとても感覚の敏感さがあって子ども自身も辛いのかも知れない」とお子さんに意識を向けてあげるだけでその姿がまた改善したという事も見られます。まずはお子さんの様子や気持ちを理解し、人いちばい感受性が豊かで、敏感な気質がある「繊細気質」というものが5人に一人の割合であるということを知ってください。
保護者としては「育てにくい」と感じることもしばしばですが、その原因が必ずあって同時に解決策も必ずあるということは理解していただきたいと想っています。
また小学生や中学生くらいになると、現れやすい症状としては学校に行きづらいということです。HSCにとって学校は人が大勢集まる空間自体がストレスを感じやすい環境です。人前で自分の意見を発表することや注目を浴びることも苦手ですし、クラスメイトの大声なども負担になります。
また、共感力が高いため、たとえ本人ではなくクラスメイトが先生に怒られているだけでも苦痛を感じてしまいます。
被害妄想に陥りやすい子どももいるため、「自分もクラスメイトと同じミスをして先生に怒られるかもしれない」と不安になってしまう場合も少なくありません。
「担任の先生が代わる」「クラスが替わる」など、新しい環境の変化に対しても敏感に反応し、不安になったり新学期に学校に行けなくなる子もみられます。運動会、文化祭、修学旅行など、日常とは違う刺激が多いイベントでは、本人が楽しいと思っていることでも人いちばい疲弊してしまいます。敏感だからといって必ず不登校になるわけではありません。しかし、ストレスや不安、疲労を感じやすいぶん、HSCの子どもたちにとっては「学校に行くこと自体とてもストレスがかかる」ということは知って頂きたいです。
HSCの子は自分の辛さを表現するのが苦手な子も多いです。安心して子どもが自分の気持ちを伝えられるような関係を作っていきましょう。
もしお子さんがHSCだと分かったら
もし自分の子がHSCだと分かったら、まずは子どもの特性をしっかり理解して寄り添ってあげましょう。
大好きな保護者の方が自分を理解してくれているという安心感があれば、どんな大きなストレス社会の中でも、子どもたちは必ず自分らしく生きて生きていける力をつけていくことができます。
そして周りと比べず焦らずありのままの子どもの姿を認めていくこと、子どもを心から信じて愛を注ぐことができれば最高の子どもの理解者であり最高の保護者になれます。HSCの子どもは周りの方が特性を理解しその特徴をのびのびと表現できるような環境の良い場所で過ごすと、人よりももっと些細な幸せを感じ生き生きと成長できるという事もわかっています。まずはその特性を知り、周りの大人が理解して支えることで本来の才能を伸ばしていく事ができます。
子どもの繊細さは人それぞれどこが強く出るかなどは異なりますが、具体的にどのように接したらよいのかいくつか例を挙げておきます。ぜひ参考にしてみて下さい!
1:子供の体調・感情を代弁してあげる
子どもはまだ自分で体調や感情のコントロールは難しく自分でもなぜそうなるのか?が理解できていないことがほとんどです。
暑さなのか寒さなのか?疲れたのか?人や状況により原因は様々ですが、必ず何かしら不快に感じる原因があるので、それを観察しながら一緒に探してあげて下さい。そして「これが嫌だったね」「何かわからないけどイライラしちゃうね」などと受け止めてもらう事で、自分を分かってくれたという安心感を抱きます。
子どももまたその苦手さに気づいたり、一緒に解決方法を探していくことで後々子ども自身が解決方法を理解して徐々にその刺激を減らそうとします。またそんな自分でも愛されている、認めてもらえているという自己肯定感を高め子どもは安心するでしょう。
2:子どもを否定して叱らない
HSCの子どもは過剰に刺激を受けやすいため、少し注意されただけでも大きなショックを受けたり相手の言葉を深読みして、実際以上に怒られたと感じてダメージを受け怒られた自分を否定し始めます。怒ることよりもゆったりとした口調で、分かりやすく、やってはいけない事を伝える方がしっかり物事の真意を伝えられます。
またHSCの子は大人に否定されることで=自分は嫌われている、愛されていないと思い込んでしまい、自己肯定感が下がってしまいます。まずは否定せず子どもの気持ちを聞いてあげた上で、なぜ注意を促すのか、その子自身を否定しているのではく、物事に対しての注意を促している事をしっかりと伝えましょう。
しかし時に、そのような対応に対して、周りの保護者やパートナー、祖父母など、自分の周りにいる大人に「甘やかしすぎ」「だから我儘に育ってしまう」「我慢ができなくなる」などと否定されることもあるかも知れません。
そういう時はHSCの特徴をお伝えして共通理解をしてもらう、または理解してもらえない方もいると思うので、そういう場合は周りの子育て論に左右されるのはなく、しっかりとHSCという気質の理解をした上でその子にあった対応をしていると自分自身の行為に対して自信を持ってほしいと想います。必ず保護者の愛情は子どもに伝わります。保護者の愛情というものを感じる力が強いのもHSCの子の特徴です。
「わたしを、ぼくを一番に理解してくれてありがとう」そんな風に感謝の気持ちを伝えてくれることもあると想います。
3、長所を見つけて誉める
HSCは敏感で感受性豊かという特徴があり、できない事を嫌がる事が多い面もありますが、長所を見つけて褒めてあげることで、その才能をどんどん伸ばしていけます。人の気持ちが分かる、物事を慎重に考える、人が気づかない細かい部分まで気づく、やさしい、努力家などといった長所である特性を、たくさん見つけて伸ばしてあげましょう。自己肯定感が低くなりがちなHSCの子も、子どもにネガティブなレッテルを貼らず、積極的に長所を伝えてあげることで自己肯定感が上がり、ありのままの自分を認められるようになります。
4:嫌がる事を強制させず受け止めてあげる
嫌がる事を無理やりさせるとパニックになる事があるので、無理やりさせず受け止めてあげる事が大切です。
他の子には簡単にできる事が、負担になる事もあるので、見方や感じ方、考え方を尊重して、価値観や判断を押しつけないようにしましょう。繊細な子どもは自分の辛さをあまり語らないので、嫌な事は嫌だと言える安心な関係つくりも大切です。
5:苦手な事は子どものペースに合わせてあげる
苦手な事には、時間がかかったりする事がありますが、その子のペースに合わせてあげる事が大切です。足並みをそろえようとする学校では、容易ではありませんが、深く考えるため行動が遅くなる事があります。
6:適度に休ませてあげる
刺激を受けすぎて、人よりも早く疲労を感じてしまったりするので、早めに休すませてあげましょう。
特に人の集まる場所や騒がしいところが苦手で、圧倒されてしまい、物事がうまくできなくなる事があるので、適度な休憩が必要です。無理をしすぎて、心が折れてらつらくなるため早めに休む事が必要です。